シンデレラガールズ総選挙は声をつけるための選挙なのか?

はじめに

シンデレラガールズ総選挙といえばアイドルマスターシンデレラガールズのゲーム内で毎年行われている選挙である。選挙の期間になると度々話題になるのが【声をつけるための選挙】なのか【シンデレラガールを決めるための選挙】なのかといった話題である。

あえて言えば選挙は何らかの社会状態を決めるためのものでどちらでもあるのだが、担当が声つきのプロデューサーの場合は【声がついている担当をシンデレラガールにするため】投票するか、【声がついていない別のアイドルに声をつけるため】投票するかを選ぶ必要がある。

当然であるがどちらかが正解でどちらかが間違っているといったことはないのだが、どのような社会の状態としてより良いかを今回は経済学的に考えていく。

 

社会的厚生関数

経済学の世界では社会の良さを社会的厚生関数という関数を使って考える。経済学では無駄のない配分(パレート最適な配分)をまず考えるが、多数ある無駄のない配分の中でどのような配分を選ぶかといった時に使うのが社会的厚生関数である。

 

最も有名な社会的厚生関数の考え方は功利主義の社会的厚生関数であろう。(ベンサム型)

社会の良さをW、社会の構成員一人ずつの効用(幸せ)をU_iと置くと

W=U_1+U_2+...U_n

のように書けるのが功利主義型の考え方である。

本来は個人ごとの効用を比較できるのか?足して計算していいのか?といった問題があるがここでは割愛する。

 

他にも

ナッシュ型

W=U_1×U_2×...U_n

マクシミン基準(ロールズ型)

W=min{U_i}

などが存在する。

 

Pの幸せとアイドルの幸せ

プロデューサー毎の効用=幸せを単純に測って比較することは極めて難しいので今回はアイドルの幸せ=Pの幸せと考えてアイドルの幸せについて考えた。

 

 

上記のツイートから飛べるリンクのフォームを使って調査をしたのだが回答数は24件だった。何に関する研究かが伝わらないと回答してもらえないということを知った。

 

当然回答数が24件と少ないので結果は有意でもなく単純に鵜呑みに出来るものではないのだが実験経済学の世界ではサンプルが大学生数十人などの論文もあるので許してほしい。参考程度だと思って見てもらえるとありがたい。

 

今回の調査は以下のようなものである。

アイドルを以下の3つの項目を使って9種類の状態に分類する。

 

  1. 総選挙1位になったことが ある/ない
  2. 声が ある/ない
  3. イベント登場回数が 多い/普通/少ない

{総選挙1位の経験、声、イベント登場回数}

1.ある、ある、多い

2.ある、ある、普通

3.ある、ある、少ない

4.ない、ある、多い

5.ない、ある、普通

6.ない、ある、少ない

7.ない、ない、多い

8.ない、ない、普通

9.ない、ない、少ない

 

この時、全ての要素はあるor多い方が幸せとする。

 

この状態で総選挙1位の経験とイベント登場回数声とイベント登場回数トレードオフとなっているアイドルに関しての比較をしてもらいどちらが幸せかを調べる。詳しくはアンケート自体を確認してほしい。

 

24件のアンケート結果は以下の通り。(%は後者が幸せだと思う割合)

2 4 75%
2 7 21%
3 4 92%
3 5 88%
3 7 46%
3 8 42%
5 7 25%
6 7 63%
6 8 38%

 

 

ここから

if 総選挙経験ありx_1=1、if 総選挙1位経験なし,x_1=0

if 声ありx_2=1、if 声なし,x_2=0

if 登場頻度高いx_3=0,x_4=1、if 登場頻度普通x_3=1,x_4=、if 登場頻度低いx_3=0,x_4=0

といったダミー変数を用いて以下の効用関数を仮定し

U(i)=β_1x_1+β_2x_2+β_3x_3+β_4x_4

その効用関数をもとに

Pr(i>j)=\frac{1}{1+exp(U(j)-U(i))},i,j=1,2...9,i≠j

 という登場頻度の高いアイドルが幸せであるとする確率をロジスティック回帰を用いて分析してβ_1〜β_4を推定した。この計算方法はWu & Gonzalez(1996)による確率加重関数のパラメータ推定方法を参考にした。

 

ここでβ_1〜β_4とは

β_1:総選挙1位になるとどれだけアイドルが幸せになるか

β_2:声がつくとどれだけアイドルが幸せになるか

β_3:登場頻度が低い→普通になるとどれだけアイドルが幸せになるか

β_4:登場頻度が普通→高いになるとどれだけアイドルが幸せになるか

を表している。

 

結果

Deviance Residual

s:
Min 1Q Median 3Q Max
-1.0685 -0.1572 0.1309 0.2788 1.0244

Coefficients:
Estimate Std. Error z value Pr(>|z|)
1位 -0.2616 1.0307 -0.254 0.7996
声 -3.0938 1.7286 -1.790 0.0735 .
普通.低 2.3807 1.5905 1.497 0.1344
高.普通 1.5948 1.3454 1.185 0.2359
---
Signif. codes: 0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1

(Dispersion parameter for binomial family taken to be 1)

Null deviance: 9.4265 on 14 degrees of freedom
Residual deviance: 3.2206 on 10 degrees of freedom
(11 observations deleted due to missingness)
AIC: 17.127

Number of Fisher Scoring iterations: 5

 

Rの結果を貼り付けると上記のようになる。ここで弁明するのもあれなのだが、自分は理論を専門にやってきたので統計処理にあまり慣れておらずミスなどがあったら指摘してほしい。本当に。

 

1位と声が負の値登場頻度が正の値をとっているのは効用関数の差を利用してロジスティック回帰をしているからである。

 

よって分かりやすい形に直すと

総選挙位1位 0.2616
3.0938
低い→普通 2.3807
普通→高い 1.5948

 

のようになる。それぞれの結果を得た時にどれだけ幸せの値が増加するかである。

上記の1~9番のアイドルの状態の効用を計算すると上から

1.ある、ある、多い 7.3309
4.ない、ある、多い 7.0693
2.ある、ある、普通 5.7361
5.ない、ある、普通 5.4745
7.ない、ない、多い 3.9755
3.ある、ある、少ない 3.3554
6.ない、ある、少ない 3.0938
8.ない、ない、普通 2.3807
9.ない、ない、少ない 0

 

となる。7と3,6の順序がアンケート結果と矛盾するがどちらも割合が6:4程度と票が割れたことに起因すると考えられる。

 

考察 

ここから言えることは【総選挙1位になる幸せ】<【声がつく幸せ】ということである。計算すると声の幸せが11.8倍大きい

 

ここで社会的厚生関数の話に戻る。

Pの幸せ=アイドルの幸せと考えると1人のアイドルiに声がつくと担当Pn_i人の幸せが3.0938増える。反対に1人のアイドルjが総選挙1位になると担当Pn_j人の幸せが0.2616増える

 

ここで功利主義的考えをすると

シンデレラガールになるアイドルの担当の数>11.8×声がつくアイドルの担当の数

の時はアイドルをシンデレラガールにするために声をつけないことが合理的で反対に11.8倍以下の時はシンデレラガールにするよりも声をつける方が合理的となる。

現実にはどちらも同時に成り立つが、シンデレラガールを狙うアイドルが多ければ声がつくアイドルは少なくなるというのは現実である。

各アイドルの担当Pの数を調べることはできないが、11.8倍という数はどれほどであろうか?もちろん回答数が少ないためこの数字はかなり雑な計算であり、信頼度は低い声を狙うアイドルの11.8倍もシンデレラガールを狙うアイドルは担当がいるのだろうか?

かくいう私も楓さんをシンデレラガールにするために投票をし続けていたので難しい話であることは重々承知なのだが、担当をシンデレラガールにする以上に好きなアイドルに声をつける方が社会的には望ましいのかもしれない。

上記の結果はプロデューサー全体の意見としての計算結果なのでシンデレラガールを狙うアイドルの担当Pはシンデレラガールになった時の幸せが高いなどといった反論は受け付ける。

 

ちなみに他のマクシミンやナッシュ基準で考えるとマクシミンならボトムアップが必要なので声vsシンデレラガールなら確実に声、ナッシュ基準も公平に分配することがbestなので声つけの方が優先される。

 

あとがき

もともと自分はシンデレラガールズ総選挙はシンデレラガールを決める選挙なのだから担当をシンデレラガールにするために投票するべきと考えていた。これは昨年までずっと楓さんに投票し続けてきた(森久保の声がつく前は少し森久保に入れたりもしていたが)からということに起因する。しかし今年になって昨年1位になったということから楓さんの得票率が下がり初めてのCD圏外となり、声を望むアイドルに場所を渡すのは社会的に望ましいのか?という考えが芽生えた。これは勝ったからこその考えで声を望むアイドルの担当に対して失礼かなとも思ったがこっちも選挙で勝たないと曲貰えないし...出番増えないし...といった問題があるので許してほしい。元々はカニズムデザイン領域での選挙制度として色々考えていたのだが社会の望ましさという別の観点から考えて今回の研究を行なった。今回の研究は回答数の少なさもあり、数字的に意味を持たせることはできないが考え方としてどちらが望ましいのか?と考えることは意味があると思った。自分は

というツイートもしているが、これは社会選択理論を専門にしている友人と話している時に出た話題で、いきなりランダムに社会の特定階級に割り当てられるとした時に最も望ましい社会にするべきだということである。現実の社会で言えば「自分が裕福だから富裕層優遇の社会にしてほしい」「自分が貧困層だから貧しい人が幸せになれる社会にしてほしい」といった考えではなく、「自分の状態に関係なく富裕層でも貧困層でも幸せになれる社会にしてほしい」という考え方である。これは全員が均等に幸せになることを目指しているわけではなく、どの階級でもその階級としての幸せを得られて他の階級よりも優遇されも不遇でもない社会が望ましいということである。

 

引用文献

Wu, G., & Gonzalez, R. (1996). Curvature of the probability weighting function. Management Science, 42(12), 1676-1690.